揺らぐ性を生きる~私はジェンダー・フルイド

ジェンダー・フルイドという概念を1人でも多くの方に知っていただきたく、いろいろと書いております。

ミユキ、生まれてはじめてボーリングをする

私は銀座のYというクラブ(踊るところではないほう)の常連だ。

週1ぐらいの頻度で通っていた時期もあったのだけど、最近は1、2ヵ月に1回ぐらい。それでもママもスタッフも常連とみなしてくれていて、イベントがあると呼んでくれる。

 

たまに、Miyuki's Barという私がママをやるというイベントもやらせてもらっている。

 

2018年2月17日、羽生結弦君が66年ぶりにフィギュア男子を連覇した日、常連が集まるボーリング大会があった。ミユキで参加させてもらった。 

 

自宅で着替えて、電車で出かけた。メイクしているときに妻が部屋に入ってきて、ちょっと気まずかった。

先日、自宅で着替えてから遊びに行っても構わないと許しを得たのだけど、妻がいる前で着替えてメイクしているのを見られたのは初めてだったのだ。

 

自宅から着替えて外に行くことは初めてではない。というか何度もやっている。Yにもそれで行ったことがあるし、自宅の最寄り駅の近所のUという店には女装でしか行かない。

それでも緊張はする。

まずマンション住まいなので住人に見られる怖れがある。実際見られたこともある。子供がいてママ友とかがいたらとてもできることではないと思う。

道行く人も電車に乗っている人も、内心ギョッとしているというのは想像がつく。何しろ、178cm、77kgもあるのだ(体重はこの2kg前後を行ったり来たりしている)。手も足もでかい。

バレているに決まっているので、内心は穏やかではない。だが、都会は他人に優しい、というより無関心だ。これも農業地域とかに住んでいたら、たぶんできないことだろう。

恵まれているとも言えるし、そういう選択をしてきたのだとも言える。どちらかと言えば後者だろう。

 

とはいうものの、昼間から女装して電車に乗るのはワクワクもする。

普段外では出すことを抑制しているミユキが出てこられて喜んでいるのだろう。他人事みたいだけど、ミユキの片割れである私から第三者的に見るとそういうことだ。

私の中では常に、男の私(これからはSと呼ぼう)が第三者的にミユキを見ているところがある。

鏡を見て「ミユキかわいい^^」と、他人から見ればキモイとしか言いようのないことをするわけだが、それはSが言っているのであって、ミユキが自己評価しているわけではない――そういう感覚がある。

 

ボーリング場でもやっぱりみんな気づいていたと思う。でも、見て見ぬふりをしてくれている。

 

私はトイレが近い。ボーリング場でも3回行った。

さすがに男子トイレに入るわけにもいかず、しかし一人で女子トイレに行くのはトラブルの元なので、ママかスタッフについていってもらう。

トイレの問題はミユキには障害だけど、まあ何とかなる。でも、もっとジェンダーフリーのトイレが欲しいなあとは思う。そういう意味では多目的トイレは助かる。

 

ミユキがボーリングをするのは初めてだ。Sが最後にボーリングをしたのが12、3年前だったので、さんざんの成績だった。

ストライクやスペアが出たときの喜び方はミユキらしかったと思う。

まあ楽しかった。

 

ボーリングのあとはYでカラオケ大会となった。Yに行ったらそのあとに寄るLという店の女性バーテンダーも参加していて、彼女から松田聖子の「制服」をリクエストされた。歌ったのだけど、喉の調子がイマイチで不快な裏声になってしまった。

その後は、ミユキでいるのに疲れてしまい、Sとして歌った。

それはそれでいいと思う。プライベートのときはSとミユキが交互に出てきて構わない。

仕事中やミユキのことを知らせたくない相手との前では、注意深くミユキを隠す。ただ、その間押し込められたミユキはちょっと悲しい。

Sとミユキが融合するというよりは、Sとミユキが好きなときに出てくるというのが、ジェンダー・フルイドである私の理想だ。そして、それを目指して生きている。

 

Yは銀座には珍しく土曜日も開けているのだけど、それはママのこだわりであって、お客が来ることは期待していない。土曜日はハウスボトルで飲み放題・歌い放題というシステムなので、儲けもあまりないはずだ(ただしスタッフも入らないので、その分利益が出るのかもしれない)。

ちなみに前述したMiyuki's Barは土曜日にやらせてもらっている。

このような事情なので、昨日はボーリング大会に行った常連の貸し切りだと思っていたのだが、しばらくしてから3人連れのお客が入ってきた。1人はミユキのことを知っているXさんだったが、こっちは団体で盛り上がっていたので、特に挨拶もしなかった。

 

途中で先方がミユキに気づき、「何かマツコ・デラックスみたいな人がいると思ったら・・・」とママに向かって言う。

「あらミユキちゃんはマツコより女よ」とママが返してくれて、その気遣いがありがたかったのだが、ちょっとショックを受けた。

私は、マツコをバカにしているわけではない。彼女は賢くて、人気が出るのもあたりまえ、むしろ尊敬している。

だが、それは体型のことを言われているのだとすぐに分かったので、ショックだったのだ。

Xさんに悪気があったとは思わない。彼は単に太めのオネエの代表としてマツコといっただけだろう。ただマツコはあの体型を武器としているが、ミユキは武器とはしていないという違いがある。

もっと痩せねば。

そして、マツコと私とが単に「オネエ」でくくられない世の中にするのに、少しでも貢献せねば。