揺らぐ性を生きる~私はジェンダー・フルイド

ジェンダー・フルイドという概念を1人でも多くの方に知っていただきたく、いろいろと書いております。

揺らぐ性を生きる

私は長い間、女装趣味者だと思って生きてきた。

難しい言葉でいえば、トランスヴェスタイトだ。

Wikipediaには、こう書いてある。

従来の社会にある服装規範に違和感を持ち、自由でありたい人が持つ性のあり方を異性装指向及びトランスヴェスチズム(transvestism)という
異性装 - Wikipediaより)

元々はこんな格好いいものじゃなかった。訳語は「服装倒錯」だった。つまり男であれば、「女装して興奮する変態」ぐらいの意味で使われていた。

実際、女装が家族にばれて、精神病院に入院させられた人も昔はいた。今も地方ではそういうことがあるのかもしれない。

なので、ネガティブに捉えられるのが嫌な人たちが、クロスドレッサー(Cross Dresser)という言葉を編み出した。

でも、そんなのは言葉の遊びで、私たちをとりまく環境は長い間何も変わらなかった。

 

しかし最近では「LGBT」という言葉が普及して、性的マイノリティを見る目も多少は変わってきた。

LGBT」にはどんどん付け加わって、今では一番長いので「LGBTTQQIAAP」なんて言葉もある。ぜんぜん覚えられないw

この長い中にも、クロスドレッサーとかトランスヴェスタイトは入っていない。

普通になったからではない。

確かにオネエブームのおかげで女装しやすくなり、今では「男の娘」と言われる女装男子たちであふれかえっている。アキバだけの話ではない。筑波大や東大といった大学のキャンパスにも普通にいるのだそうだ。

だから「理解者」は増えたと言える。面白がっているだけだとしても、それだけで十分に理解者だ。

だが一方で、嫌悪感を露わにする人もたくさんいる。LGBT*(この*はこの後に文字列が続くという意味)に対して表立ってキモいと言えない分、女装に対して攻撃的な人が増えたような気がする。

 

私は生物的には♂だ。生物的には♀な人と所帯も持っている。

女装をやめられそうもないので、結婚する前に女装の趣味があることを打ち明けた。それでもOKしてくれたから結婚した。

結婚したあと、妻は受け入れようと努力してくれたのだけど、「女装に性的なにおいがまとわりつくのが耐えられない」と言われた。だが結婚前に打ち明けていたこともあって、彼女の前でなければ女装するのは勝手ということにしてくれた。

女装して不特定の男性とセックスするなんてことはなかったのだけど、「服装倒錯」だから性的な興奮が伴っていたのは事実だ。女装してする自慰行為は男性のときのセックスよりもずっと快感だ。

ただ自分の中では、「倒錯」だけではないという気持ちがずっとあった。

何かが解放されたがっているという感覚があった。

一時期は性同一性障害だと思ったこともあった。カウンセリングに行ったこともある。だが、女性の躰を手に入れたいわけではないとだんだん分かってきた。

 

女装したくてたまらないときは男の格好が本当に疎ましくなる。いつでも女装でいたいと思うときもある。

ところが女装が面倒だと思うとぜんぜんしなくても平気だ。数ヵ月どころか数年間しなかったこともある。

これは何なんだろうとずっと考えていた。

 

最近知った言葉が、ジェンダー・フルイド(gender-fluid)だ。昨年オックスフォード英語辞典に新語として採用されて話題になった言葉である。

性自認が揺れ動くこと――「あっ!これだ!」と思った。

「中性」とか「両性」とか「無性」とかという言葉は昔からあったが、どれもしっくりこなかった。男と女を行ったり来たりが一番しっくりくる。

早速Facebookの性別をgender-fluidに変えた(今のところ、性別は非公開にしている)。Googleは女性モードのアカウントがあるので、そちらを「その他―ジェンダー・フルイド」に設定した。

 

タイミングはそれよりちょっと早かったのだけど、妻に「最愛の人の前で本当の自分が出せないのはやはり苦痛だ」と打ち明けた。

いくつかの女装専門店でないお店と、そこのスタッフと、結構多くの友達が女装する自分を認めてくれて、そこでたまに女装して遊んでいることを打ち明けた。

妻は「いいよ」と言ってくれた。どこまでいいのかはまだ手探りだけど・・・

 

その数日後に自分がジェンダー・フルイドだと自覚した。

これは天の配剤としか思えない。

 

2018年2月。私はイニシエーションした。

自分中にいる2人の男女をそのときどきでしっかり解放して生きることにした。

男のほうは既に別のサイトを持っている。女である「ミユキ」を解放していく経過やそのときどきに思ったことをここに綴っていきたい。