シスジェンダー
新しい概念が出てきたので、それまであった概念に付けられた新しい名前のことをレトロニムと言う。
例えばエレキギターが登場したので、従来ギターだけで済んでいた楽器をアコースティックギターと呼ぶようになったという類のことだ。
ジェンダー用語にもある。
ホモセクシャルに対するヘテロセクシャルなどはよく知られているだろう。こちらはかなり昔に作られた言葉だ。たぶん「レトロニム」という言葉より古い。
では、トランスジェンダーに対するシスジェンダーはどうだろうか? あまり知られているとは言えないようだ。こちらは新しい言葉だ。
俗な日本語だと「純女」、「純男」などと言う。つまり身体的な性と性自認が一致する人たちのことだ。
ヘテロセクシャルもシスジェンダーも、自分たちでは「ノーマル」とか「ストレート」と考えているはずだ。こう思うこと自体が「差別」などとは気づいていない。
「シスジェンダー」は、そういう気づきをもたらすためのレトロニムだが、あまり機能しているとは言い難い。ジェンダー関連の書籍や記事でしかお目にかからない言葉だからだろう。