自立とは依存すること~『生きる技法」
ジェンダー・フルイドという概念を知って救われた私は、ほかにも救われる人がいるかもしれないと思い、5年計画でこの概念を普及しようと行動を始めた。
手始めは、このブログだった。
記事が少したまってきたので、次のステップとしてFacebookに秘密グループを作った。
その秘密グループに十数人のお友達をお誘いした。全員が参加してくださった。感激だった。
私は元々、人に頼れない性格だった。このようなグループを作って、人に応援をお願いするなんて昔の自分には考えられないことだった。
ジェンダー・フルイドという言葉を知って、私は人に心を開くことができるようになったのだと思う。
だが、自分の中では、このやり方が本当にいいのか、お誘いしたお友達に無理をさせているのではないかと、心に引っかかりがあったのだった。
そんなとき、たまたまFacebookの広告に表示された、以下の記事を読んだ。
ああ、私のやり方は間違っていなかった。グループに参加してくださった方々は「本当の友だち」なんだーーと力づけられた。そして参加してくださった方々への感謝が深まった。
記事で紹介されていた『メゾン刻(とき)の湯」と、対談相手の安冨歩教授の『生きる技法』と『ありのままの私」をさっそくAmazonで購入した。
そのうち『生きる技法』を読み終えたので、ご紹介したい。
著者の安冨歩先生は、フルタイムの女性装で有名な東大教授だ。ただ、上の記事はそれに惹かれて読んだわけではない。安冨先生についてはもちろん存じ上げているが、記事を開いたら、安冨先生がいた!という感じだったのだ。
オビにある”「助けてください」と言えたとき、人は自立している”というコピーが、本書の内容を的確に表している。煽りでない正確なオビは珍しい。
「自立とは依存することだ」という言葉が、中村尚司さんという経済学者の「当事者性の探求と参加型開発――スリランカにみる大学の社会貢献活動」という論文に書かれていたという。
安冨先生は、この言葉を以下の通り大絶賛している。
私は、この原理の発見は、経済学の歴史上、最大の発見であると考えています。この原理は、経済学のみならず、人間と社会についての近代的な見方を、根本から転換してしまう、決定的な革命をもたらします。二〇〇二年のこの原理の発見により、それ以前の社会科学はあらかた無意味になりました。(『生きる技法』より)
「それ以前の社会科学はあらかた無意味になりました」は少し大げさだと思うが、それ以外は同感だ。
この本のおかげで、私の生き方も大きく変わりそうだ。
というよりも、この本に書かれている方向に大きく変わろうとしていたときに、何の偶然かは分からないが、まるで私の背中を押してくれるかのようにこの本に出会ったと言っていい。
本書は、大きく15の「命題」について解説するものだ。
- 自立とは依存することだ
- 誰とでも仲良くしてはいけない
- 愛は自愛から発し、執着は自己愛から生じる
- 人を愛するためには、自分を愛さなければならない
- 貨幣とは、手軽に人と人とをつなぐ装置である
- 自由とは、選択の自由のことではない
- 自由でいるためには、勇気が必要である
- 人生の目的とは、その人自身の「道」の究極点である
- 夢とは、人生の目的に向かう一里塚である
- 夢を実現することそのものには、何の意味もない
- 幸福とは手に入れるものでなく、感じるものである
- 「自分は悪い子だ」と思い込まされていることが、自己嫌悪である
- 自己嫌悪を乗り越え、自分を愛するようになることが、成長をもたらす
(補)自己嫌悪こそが、破壊と破滅と失敗と不安と恐怖の原因である - 成長とは、生きる力の増大である
- 成長は、願うことで実現される
どこかで聞いたような言葉だと思う人もいるかもしれない。
だが、いわゆる成功本に書かれていることとは一線を画しているということは保証しよう。
- なんだか生きづらい
- やる気がなくなりやすい
- コミュニティビジネスみたいなものにとても違和感がある
- 孤独死がこわい
- 人間関係に疲れている
- 夢を持ちたいが、叶ったあとが不安
こういう方々に、心からお勧めしたい本である。