7年ぶりに女装を再開した理由
前回書いたように、一人暮らしにも関わらず、大学時代には一切女装をしなかった。
卒業して就職しても、会社の寮に入ったので、女装から遠ざかっていた。
何しろ、今どき考えられない2人部屋だったし(のち1人部屋になった)、風呂も大風呂だったから。
再開のきっかけは婚約破棄だった。
事情は割愛する。結納を済ませていたので、父と二人で謝りに行った。こちらの一方的な婚約破棄ではなかったので、先方も許してくれて、結納金を返してくれた。
ちょうど私の誕生日の前日だった。
父は不憫に思ってくれて、返済された結納金を全部やると言ってくれた。いつも金欠だった私は、ありがたく受け取った。
そのお金を持って、女装サロンに行った。7年ぶりに女装がしたくてたまらなくなったのだ。
心を癒やしたかった。そして癒やす方法が、それしか思い浮かばなかった。
新大阪のチサンホテルのすぐそばに、パレットハウスという女装サロンがある。私が行った当時は、エリザベスという老舗女装サロンの大阪支店だった。
サロンは事務所用マンションの1室にある。ドアは住宅用マンションと同じで、中が見えない。4、5分ほど開けるのをためらったあと、いったん立ち去った。
新大阪駅近くまで戻ってきたが、女装への想いを絶ちがたく、またマンションに戻るのだが、なかなか入れない。
最後は、本当に清水の舞台から飛び降りるぐらいの気持ちで、中に飛び込んだ。
きらびやかな服や下着が所狭しと並んでいる。うっとりした。
初めてだと告げると、「入るのに勇気がいったでしょう?」と店員が言う。みんな初回はなかなか入れないのだと言う。すこしホッとする。
服やウィッグはレンタルしてくれる(もちろん販売もしている)が、下着は自分のものでないといけない決まりだ。店員に相談して、ブラとショーツとパンストを購入した。
自分でメイクできない人には、ちゃんとしたメイキャップアーティストのスタッフがメイクしてくれる。
下着を着け、女性用のスーツを着て、キレイにメイクしてもらって、ウィッグをかぶせてもらった。
鏡に映った姿を見て、もう戻れない道に入ったことを自覚した。
30歳、40歳という節目が来るたびにもうやめようと考えた。でも結局やめられなかった。
50歳になるときには、もうやめる気はなかった。逆に普通のおばさんっぽくなったからw
今は、60歳になることを楽しみにしている。